『韓国映画ベスト100』 [白鳥(文芸)]
韓国映画ベスト100―「JSA」から「グエムル」まで 文部省でゆとり教育推進の戦犯といわれた寺脇研氏(最近”朝ズバ”に出てきてみのもんたとニヤニヤしているようですが)の映画評論本。まあ昔から、キネマ旬報などに投稿していた方なので、自身がおっしゃるとおり早く映画評論一本で食べていってほしいところです。さてベスト100のほうですが、ベスト100の順位をつけているわけではなく、「南北分断」「流血」「韓国社会の光と影」「女と男」・・・などのカテゴリ別に10本程度づつを選び出しています。なるほどなるほど。
あおばさんに聞いたところ、数えてみたらこのうち49本を見ていたそうです。すごいなあ。驚いていましたよ。
映画評論もなかなか面白いのですが、見逃せないのがページの端に加えられた各種のコラム。「朝鮮戦争」「脱北者」「韓国風俗」「FTA」・・・戦後~現代までの韓国(大韓民国)の抱える問題に対して寺脇氏の解説が加えられているのです。裏返してみると現代日本の抱えるさまざまな問題への警鐘も鳴らしているようです。
さて、ここで、あおばさんに聞いてみました。韓国映画ベスト3です。いかがでしょうか。
ダンサーの純情 特別版
- 出版社/メーカー: エスピーオー
- 発売日: 2006/10/06
- メディア: DVD
偽装結婚して韓国に入国した中国東北部出身の朝鮮族の娘とダンサーの淡い恋
ムン・グニョンの魅力爆発です。
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: DVD
チェ・ミンシクの演技が光る。
昨年、ハリウッドでリメイクされたが、オリジナルの方が断然いいです。チョン・ジヒョンの出世作ともいえるのではないかな。
『ディスカバー・ジャパンの時代』 (森 彰英著) [白鳥(文芸)]
昨今、日本国有鉄道という言葉も懐かしくなってしまったが、1971年に始まった国鉄の一大キャンペーン『ディスカバー・ジャパン』の記録と分析。
1970年の大阪万博向けに輸送力の大増強をなした国鉄が、その後に予想された落ち込みをカバーするために始めた旅客誘致キャンペーンが、『ディスカバー・ジャパン』である。特定の地方を目的地としたキャンペーンでなく、日本全国をターゲットとしたこのキャンペーン、ちょうど高度成長時代の最後の花となって咲き、日本再発見、個人レベルでは自分探しの旅への呼び水となり、第一次石油ショックを乗り越え、国鉄の赤字が深刻化する70年代後半まで続いてゆくわけだ。まさに日本が熱かった時代の記念碑的キャンペーンなのだ。アンノン族、カニ族など当時の旅行風俗も聞かれなくなって久しいが、こういった自分探しの旅が、その後の海外一人旅のブーム(といっていいよな)につながっていったわけだ。
当時、都内に住んでいた白鳥は、ディスカバー・ジャパンの駅のスタンプ収集にはまってしまい、西は熱海、伊東、北は高崎、前橋、東は館山まで子供ながらに鉄道旅行を始めたころだった。当時のポスターの一部が掲載されているのだが、これが今見てもインパクトのある写真で、旅心を誘うのである。お堂で座禅を組む一人の女性の姿を引きで撮った写真!このポスターは覚えていました。80年以降、急速に日本の風景は破壊されてしまったと感じているので、現実にこういう風情を感じることができるかどうかは、残念ながら保証の限りではないが残してほしい日本の原風景だ。観光地ではそれなりに景観が保全されているところもあるけれどもうそろそろ、鉄筋コンクリートと看板だらけの町並みを見直すべきときだろう。
ばなな2題 [白鳥(文芸)]
少し前に読んだ2冊です。
『ひとかげ』
10年程年前に書かれた短編『とかげ』のリメイク版。
ちょっとした霊能力を持つ少女とかげと中年男性の生活の物語。ちょっとインパクトのあるタイトルのつけ方です。最初は知らずに買ったのでおちょくってるのか~っと思いましたけど、この10年、立てには過ごしていないなと思わてくれました。乾いた『とかげ』から湿り気のある人肌の『ひとかげ』に、作者も成長している様子が感じられました。
『イルカ』
五郎との出会い、ボランティア生活、海辺の別荘での生活をとおして、あたらしい命の誕生を感じる主人公の物語。こればっかりは子供を生んだ人でないとかけないなぁ。イルカが子供をつれてくるという発想は、ちょっと意表をつかれました。
帯封など読まずにいきなり読み始めるタイプなので、前半ちょっと硬い感じで進みませんでしたが、別荘での生活あたりから臭いや、雰囲気、風に異様に敏感なばななの世界が戻ってきます。
10年後に『まいるか』=『参るか』で続編を書いてくれないかしら。